2.「美術館利用の心得」〜世界共通のルールとマナーについて〜

せっかく美術館に行っても楽しめなかったらつまらないです。しかし楽しむことと自分勝手なわがままをすることは違いますね。やはり美術館を利用する時には守らなければならない独特のルールがありますから、そのルールを守って楽しまなければなりません。ここでは世界中どこに行っても共通する(守っていれば間違いない)基本的な心得を解説してみます。
  まず、美術館とは最初に確認したように、人類共通の財産を管理しているところです。ですから当然それを壊してしまったりすることは間違いでも避けなければなりません。作品を守り、未来の人たちに伝えてゆくことは、実は全ての人に課せられている義務なのです。そのために次のような点に気を付けなければなりません。
基本的なルール
※ 館内に危険物(火がついたり爆発したりするものや、ものを溶かしてしまうような薬品)
を持ち込まないこと!
※先のとがった長いもの、例えば傘などを展示室に持ちこまないこと!
※水気のあるもの(例えばジュース、泥だらけの靴なども)を展示室に持ち込まないこと!
※ 展示室内で飲食をしないこと!
※ 酔った状態で入室しないこと!
※ 鉛筆以外(インク式のペンなど)は展示室で使用しないこと!
※ フラッシュを使わないこと!
(写真撮影自体がほとんどの場合禁止されています。)
※ 作品に触らないこと!手で触らなければよいということではありません。(許可されて
いる場合を除きます)
※ 必要以上に作品に近づかないこと!危険と判断されれば触れていなくても注意を受けます。
(45cmくらいが限界です。それ以上近づかないこと!)
※ 息を吹きかけて作品を動かしたりしないこと!
※ 作品が置かれている展示台などにも触らないこと!


基本的なマナー
※ 館内で大声を出さないこと!
(展示室以外でも気をつけましょう。)

※ 館内で走り回ったり暴れたりしないこと!

※ 展示室内で携帯電話を使用しないこと!

※ 写真撮影など許可無く行わないこと!

※ その他職員の指示に従うこと!
  マナーというものは、基本的にまわりのお客さんの迷惑にならないようにすることです。美術館では静かに考えながら作品をじっくり見たい(対話したい)という人が大半です。しかしこれらのマナーは公共の空間であればどこででも当然考えなければならない当たり前のことばかりです。美術館だけが特別なわけではありませんね。
動物園と同じ

  最初に確認したように美術館も動物園も基本的には同じ博物館です。美術館の資料は美術作品ですが動物園では動物が資料になります。動物園には危険な猛獣から小動物まで様々な生き物がいます。例えばライオンの檻ならば普通檻の周りにさらに柵がついていたりします。なぜなら危険だからです。また危険の無い小さな動物でも普通触ることなどはできないようにしてあります。小動物にとってはむしろ人間が脅威になるのです。動物園ではそれぞれの動物の習性を専門家が良く理解し適切な観覧の方法を提供しています。仮にそのルールを無視し、ライオンの檻に手を入れたなら、もしかすると腕ごともっていかれるかもしれません。かわいいからといって毎日何百人もの人が抱きかかえ、撫でていたら小さな動物は弱って死んでしまうかもしれません。動物園ではその動物が自然の状態でどのような生活をしているのかを伝えようとしています。見る側もそれをじっくり観察し、人間との違いや共通点、その動物が暮らしていた環境のことなどなどを考えます。
  美術作品の場合も同じように考えてみてください。「触らないで下さい」という理由は動物の場合と同じで触ることによって触った側に危険がある場合と作品が壊れてしまう場合があります。
注意を無視し、ライオンの檻に手を入れて、仮に事故があった場合、ライオンを責めることができるでしょうか。興味本意で手を触れた動物がもしも死んでしまったら、もう生きかえらせることはできません。どれだけの後悔をすることでしょう。専門家は資料と、それを見る人の両方を事故から守るためにルールを決めています。そのルールにはやはり専門的な理由があるのです。
ライオンを見に動物園に行ったとします。
「アッ!ライオンだ!」で終わっていませんか?

もしもライオンに興味をもったなら、その習性や生態などを知りたくならないでしょうか?あの大きさの根拠はなんなのか、あの形はどんな進化の結果なのか、ライオンが暮らすアフリカのサバンナはどんな世界なのか、地球のどんな環境や歴史があの生物を育んできたのか…などなど。

美術作品も同じです。作品は例えるならライオンです。作家はアフリカのサバンナです。作家を育てたのが人類の歴史やその人類を育んできた地球環境ということになります。作品だけをただ見るのではなくそこから繋がる様々な関係を見てゆくと、一つの作品からどんどん世界が広がってゆきます。