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![]() 作家と作品について: 澤口俊輔は1968年宮城県石巻市生まれ、現在仙台市在住の作家です。非常に繊細な対人対物的関係、人が事物と出会った時最初に生まれる微細な感覚、「言葉以前の感覚」を視覚化しようとしています。 地震計の針が大地の微動を針先で記録するように、漠然とした心のもようをペン先で記してゆきます。ペン先から腕の筋肉を介し大脳を経由、眼球の水晶体に映る己の腕と白い用紙。循環する一連の関係性、そのどこにも言葉はなく、深い記憶や目の前の出来事に振れる心の針がその動きを記録するように作品を生み出してゆくのです。つまり「言葉を説明するために描く」のではなく、「言葉にする代わりに描く」のです。 澤口の表現は多様で、毎回必要に応じた表現、素材を使用します。しかし、どのような表現様式をとっても、またどのような環境や人を相手にしても他者とのコミュニケーションを重視する姿勢は変わりません。海外での活動も少なくない澤口は、言葉によるコミュニケーションの限界を経験的に知っています。だからこそ言葉では伝えられないような初期的、生理的感覚を表現するのです。なぜならそのような感覚であれば全ての人間に共通し、言葉に頼らないコミュニケーションが可能だと考えているからなのです。あいまいな言葉に頼らなくてもよい、感覚的コミュニケーションの可能性を最大限に活用する試みをこの作家は繰り返しています。 |
言葉にできない心の表現: 言葉によるコミュニケーションは絶対のものでしょうか?自分が話した内容は、本当に相手に正しく伝わっているでしょうか?言葉、会話に対する不信感を持った経験はありませんか? 一生懸命はなしているのに、どうしても誤解されてしまうことは珍しいことではありません。 言葉による意志の疎通は非常に難しいものです。他者を目の前にし、呼吸や思考の速度などを常に感知しながら言葉を選び、自分の心を伝え、同時に相手の心を理解しなければならないのです。しかも理解し合いたいという前提が必要です。人間にとって言葉が最も重要なコミュニケーション手段であることは確かですが、言葉では表現のしようが無いこともたくさんあります。小さな子供が心理的理由からじんましんを出したり腹痛を訴えたりする事があります。言葉にできない心のふるえを身体で表現しているのでしょう。 日常の様々な場面で常に揺れ動いている人の心の軌跡を誰もが目にすることができたならば、人はもっと互いを思いやり理解し合えるのではないでしょうか。美術表現にはそのような言葉では表現できない「心」が表現されているものです。また表現できるものなのです。 |