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![]() 作家と作品について: 名倉康晴は1964年、青森県三沢市生まれ、現在青森県弘前市在住の写真家です。名倉の主なフィールドは白神山地です。青森県と秋田県にまたがる白神山地は、世界最大級のブナ原生林を有し、太古からの日本の原風景を保ち続けています。1993年に鹿児島県の屋久島とともに日本で初めて世界遺産に登録され、域内に生息するあらゆる生態系の保全のため入山規制などが厳しく実施されています。 名倉は「神の領域」とも思える自然に身を置き、そこに積み重なる時間と、私たち人間の日常に流れる時間の格差を体感しながらシャッターを切り続けています。 |
作家の言葉: 津軽「白神山地」との出会いは私の理解を超えた不思議なものでした。漆黒の岩の巨大な扉にも見える暗門の滝を抜け遊歩道をはずれ山の奥深くへと進んで行きました。土に返った落葉を踏みながら何か言いしれぬ不安のようなものを感じていました。しばらくすると十メートル程の広場にも似た空間にたどり着きました。そこは他の空間よりあきらかに気温が低く何か得体の知れぬ者の存在を感じさせるものでした。周囲を囲むブナの木は、ねじまがり美しいブナという表現とは掛け離れたものであり、そのブナの木でさえ空間への侵入を拒まれているようでした。つがいの蝶が真白な羽をひらめかせ飛びつづけています。「私は来てはいけない所に足を踏み入れてしまった。」正直な感想でした。私の理解を超えた存在を確信したのです。 我々の意識を超えた者達の声を聞きたい。本当の事を知りたい。そして伝えていきたいという気持ちが私の中に芽生えたのです。私は「写真を制作する」というよりも何か別の力につき動かされているという感覚が常にあるのです。自分では民話の語り手のようなことが私の仕事ではないか。写真は自分が撮っているのではなく自分以外の意思により撮らされてもらっているのではないか。そのように感じます。私に啓示を与えている者は何者なのか。それは我々人間が入る事を許されない世界に存在するものなのではないか。私はその存在を少しでもはっきり感じてみたいのです。人間の入り込めない「扉」はあらゆる所にあるはずです。私は白神山地で「扉」を見付けてみたいのです。少しでも「扉」の中を覗く事が出来れば津軽「白神山地」の本当の意味、私が今、白神山地で写真制作を続けている意味を知る事が出来るのかも知れません。 名倉康晴(なぐら やすはる)
※N.E.blood 21 Vol.19 NAGURA YASUHARUパンフレットから
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