作家と作品について:
  リンダ・バトラーは1947年、アメリカ合衆国ウィスコンシン州生まれの写真家です。
  ある限られた場所におけるありふれた日常が、視点を変えることで非常に貴重な文化的価値へと変貌することがあります。リンダの被写体もまた、ありふれた日常ですが、写真に収められたそれらの光景は、私たちが普段眼にする日常とは明らかに異なる輝きを放っています。
「Rural Japan」は1992年に発表された写真集で、Rural Japan=「日本の田舎」を意味します。この写真集には1986年から1989年までに日本で撮影された写真が収められていますが、どの写真の被写体も私たち日本人にとってはごくありふれたもののように感じられます。しかし、一方でリンダが撮影したそれらの光景を、実際に自分の目で見た記憶が定かでないことも事実です。当たり前に思っていた日常を、私たちは少しずつ失い、目にする機会もなくなってきていることに気づかされます。
  上の作品は日本家屋の屋内から庭を臨む光景です。古いこの家の軒先にはツバメが巣を作り、子育てをしていましたが、高速道路を建設するために取り壊され、現在はもう存在していません。下の作品はタクアンを作るために干されている大根です。真っ白い大根が秋の日差しを受けて輝いています。冬の間の保存食として、昔はどこの家庭でもこのような光景が見られましたが、現在では一部の農家でしか行われなくなっています。
  リンダは日本滞在中に写真に対する情熱に目覚めたと語っています。本州、四国、九州を旅しながら目にする様々な日本の文化に興味を抱き、そのつど写真に収めてきました。アメリカ人である彼女のそのような行為が、日本人である私たちに「失われつつある美しき日本の文化、歴史、日常」をあらためて見つめなおす機会を提示していることは、喜びでもありますが、一方で悲しむべき現実でもあります。日本の美しさを再発見するために、私たちも旅をするべきなのかもしれません。