![]() 作家と作品について: 亀井陽逸は1948年、宮城県本吉郡津山町生まれ、現在同町在住の作家です。初め能面の制作など工芸的な作品を制作していた亀井は、その後独学で彫刻を学び、公募展に出品するなど積極的な活動を行ってきました。地場産品である矢羽根杉材を使用した亀井の作品には、民俗工芸的な美しさが見られます。素材の特性を生かすために焼きが施された表面は、独特の香ばしい香りを伴っており、誰にでも親しみやすいやわらかさと懐かしさを感じさせます。 亀井の作品の形態はヘンリー・ムア(イギリス1898〜1987)の影響を感じさせます。ムアはアフリカなどの原始美術を研究し、自らの彫刻表現を確立させてゆきました。ギリギリまで単純化、抽象化された人体表現はその後の彫刻家たちに大きな影響を与えています。 彫刻は表面を見るものではありません。大切なのはその内実です。亀井が目指しているものもまたその内実であり、表面的な矢羽根の効果は作品の主題とは直結していません。 近年亀井は「ファミリー」と題した作品を連作しています。抱擁し一体化した母子像や、寄り添う家族の肖像には生まれ育った土地を愛し、地に足をつけて暮らす亀井の生き方がやさしく表現されています。 |
![]() 矢羽根杉について: 矢羽根杉は津山町の特産品です。林業が盛んな同町で考案されたこの素材は、平行四辺形に整形されたスギ材をブロック状に組み合わせた物で、通常ならまっすぐな木目が見える木材の表面に矢羽根状の模様ができるのが特徴です。寄木と呼ばれるこのような木材の加工法は昔からあるもので、指物(さしもの)と呼ばれる木工装飾品などに多用されています。 幹がそれほど太くならない杉は、丸太のまま加工しても大きな塊として製材することは難しく、彫刻のようにある程度の量を必要とするような使用には適していませんが、矢羽根杉は必要に応じた塊を作ることが可能です。また、一本の木から得られた木材は反りや割れなどが生じ、扱いが困難ですが、集合材であるこの素材は加工もしやすく様々な利用が可能です。 |