![]() 作家と作品について: 岡田卓也は1969年愛媛県宇和島市生まれ、現在岩手県盛岡市在住の作家です。1994年に岩手大学教育学部特設美術科を卒業し、その後は岩手県を拠点に作品を制作・発表しています。 1995年前後から岡田が一貫して作ってきた「積層」にはどのような意味が込められているのでしょう。 私たちが日常目にしているもののほとんどが、実は表面でしかありません。例えば目の前に白い車が一台あるとします。この車の色、つまり表面は白いのですが、実際には鉄板があり、その上にサビ止め塗装が施され、白いペンキが塗られ、更にその上からクリヤー塗装され、最後にワックスがかけられているものなのです。またこの例えでは塗料の話だけをしていますが、これ以外にも積み重ねられたたくさんの層があります。車の開発、各部品の設計、組み立て、塗料を開発、塗装機械の開発など…。何気なく暮らしていると気づかないことですが、私たちの身の回りにはたくさんの「人間の層」「時間の層」が積み重ねられているのです。そういった時間の層を私たちは「文化」と表現したりします。 岡田の作品は積み重ねられた古新聞のように見えます。毎日膨大な出来事が記録された新聞の束が重ねられてゆくように、たくさんの人間と、その生きた時間が現在の私たちの暮らしを支えています。そして実は、私たちの何気ない毎日が未来を支えてゆく新たな層を産み出す行為でもあるのです。岡田は自分自身が層を作ることで「これまでの時間とこれからの時間」の尊さを私たちに感じさせようとしているのかもしれません
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素材・技法などについて 岡田の作品にはさまざまな素材が使用されています。この作品に関しては、透明度の高いアクリル樹脂、和紙が主に使用されています。樹脂とはもともとマツヤニなどのように樹木から抽出される物質を意味しますが、現在では石油などから精製された合成樹脂が一般的です。多くの場合化学反応によって液体から固体へと変化する性質があり、FRP樹脂などがさまざまな物に使用されています。 樹脂の作品を作る場合、まず初めに液体樹脂を流し込むための型を作ります。そして硬化剤と呼ばれる薬品を調合した液体樹脂を型に流し込み、硬化後型をはずします。樹脂は硬化する際、化学反応によって高い熱を発します。また膨張するため、よほどしっかりした型を作らなければなりません。そのため一般に個人が扱うことは非常に難しい素材と言えます。岡田の作品は少量の樹脂を型に流し、そこに和紙を敷き、更に樹脂を少量流す。単純で時間のかかる作業を繰り返すことになります。また型から抜いた作品を磨き上げることが、想像を超えた重労働になります。岡田のアトリエは床から天井まで真っ白い樹脂の粉に覆われています。加工に用いる有機溶剤、粉塵など、健康を損なう恐れのある材料をたくさん扱う大変な作業です。 |