![]() 作家の言葉:高橋和真 私は甘いものが好きだ。 アパートでの一人暮らしなので食料の買出しのためスーパーによく行くが、必ずデザート類を買って帰る。それはプリンだったりゼリーだったりアイスだったりお菓子だったりする。プリンはNHKのあるアニメ番組の影響でよく買うようになった。 ゼリーやアイスは自分の中では夏の食べ物という印象があるのでそんなに買うことはない。プリンだけ、ゼリーだけのものよりクリームがのってたり中に果物が入っていたりするものを選ぶ。少しお得な気分になるからだ。お菓子の場合もチョコとスナックが一緒になったようなものが好きだ。スーパーでの商品のチェック、正確にはパッケージデザインのチェックが習慣になってしまった。図面まできっちり完成している作品のパッケージデザインが変わった場合、また新たに作り直す必要があるのでこのチェックは欠かせない。ガムよし、チョコよし、カレーよし。カップスープにコーンフレーク、スポーツドリンクに歯磨き粉、すべて問題なし。 今日は新商品のお菓子を見かけた。今まであったお菓子のニューバージョンである。試作用、手直し用、ストック用に最低3箱は購入する。最終的に図面を制作するまでにいくつか買い足す必要があるので、おいしいお菓子であることを願いつつ家に帰る。 お菓子は紅茶と一緒に食べる。ティーサーバーもあるのだがティーバッグで簡単に入れることが多い。お菓子が甘いので砂糖は入れない。お茶とお菓子を作業机に運ぶ。箱を破かないよう竹串を使って糊付け部分から慎重にはがしていく。天地の糊付けをはがしたらハサミで角を切り開いて平面にする。パッケージを眺めながらお菓子を食べて紅茶を飲む。なかなかおいしいので少しうれしい。お菓子をつまみながらパッケージデザインから浮かんだイメージを広告の裏紙にスケッチしていく。こうしてまた作品の数と体重が増えていくのである。 (たかはし かずま)
※N.E.blood 21Vol.9 TAKAHASHI KAZUMAパンフレットから
|
|
|
作家と作品について 高橋和真は1973年新潟県生まれ、現在新潟県在住の作家です。2000年に東北芸術工科大学大学院芸術工学研究科を修了し、その後も山形を拠点に作品を発表しています。 子どもの頃は、誰もが少ないお小遣いを工面し、お気に入りのお菓子を買うものです。特に「おまけ付き」のお菓子は子供にとって一つの重要な娯楽とも言えるでしょう。高橋の作品にもそういったささやかな娯楽性があります。 もともとは単に商品のパッケージとしてデザインされたお菓子や日用品の箱を、高橋は展開し、平らな紙にもどしてしまいます。そして印刷されているデザインから発想した新たなイメージを基に上質なペーパークラフト作品を生み出すのです。一見無邪気で笑いを誘うユーモラスな作品ですが、その構造の緻密さは図面を起こす段階から多くの時間を費やし、工学的に計算されています。 一つの箱から無駄なく一点の作品を完成させ、しかももともとのパッケージデザインを作品に不可欠な図柄として利用してしまう。そしてほとんどの作品がカラクリ機能を備えている点など、同じ事を実際にやってみようとすると、本当に難しい作業で、実は誰にでも簡単に作れる作品ではないのです。小さな子どもであれば愉快なオモチャとして単純に遊びの対象とすることでしょう。しかしそれを作り出した高橋のセンスや造形力に目を向けると、作品からは単なる紙のオモチャを超えた知的な面白さが溢れ出してきます。 毎日私たちが目にするさまざまな物、たとえば身近な町並みひとつであっても、人間によって作られた風景なのです。つまり私たちは、どこかの誰かが情熱を注ぎ込んで作り出した作品の中で暮らしているようなものなのです。一本のシャープペンシル、一個の消しゴム、今日履いてきた靴…些細なものですが、実はどれをとっても簡単に自分で作ることはできません。 人間が作り出すものにはそれを作った人のたくさんの努力と情熱が注ぎ込まれていることを忘れないようにしたいものです。 |