作家と作品について:
  浅沼信子は1931年、宮城県石巻市生まれ、現在仙台市在住の作家です。
  浅沼の作品は一見すると絵具で描かれた絵画に見えますが、実は蝋染による染色作品です。浅沼の作品は主に東北の気候風土からイメージされています。縄文土器や土偶などを初め、土着的なモチーフと炎を組み合わせた表現からは、いにしえより受け継がれてきた東北的気質が伝わってきます。また染色という技法自体が持つ長い歴史と、表現されたモチーフの相乗効果によって、私たちの内に眠る古い記憶まで呼び覚まされるようです。
  蝋染(ろう染め)について:
  浅沼が行っている染色の方法は蝋染と呼ばれる技術です。染色には様々なやり方が在りますが、ここでは蝋染について解説します。
蝋染は古くは昴秩iろうけち)と呼ばれる染色の技術でそのルーツは中国と考えられます。日本には奈良時代に技術が伝えられました。
  蝋染は白布を染める際に、様々な模様を施したりする場合に用いられる技法です。染色を行う前に、布地に溶かした牢を使って図柄を描きます。蝋には染料をはじく性質があるので、図柄部分は防染されるわけです。例えば白布を赤く染め、染まった布に蝋を使って図柄を描き防染した後、黒く染めれば、図柄を描いた部分だけが赤いまま模様になるという仕組みです。また布に塗った蝋を固まってから軽く揉み、ひび割れを作ることで、ひび割れのできたところにも染料がしみこみ亀裂模様になります。染色を終えた布は表面の余分な蝋を削り落としてから、アイロンなどで加熱し、脱蝋します。それを更に蒸し器などで蒸すことで完全に蝋を取り除き、同時に染料を定着させます。浅沼の作品のようにたくさんの色を染め分けるためには多く   の工程をへな   ければなりなりません。