作家と作品について:
  森彬は1939年、宮城県蔵王町生まれ、現在仙台市在住の作家です。
  現在の森の表現は20年以上前から始まっています。タイトルには「生体」「DNA」「バイオメカノイド」という言葉が使用されており、画面に描かれる内容からこの作家が一貫して「生命の危機」を訴えようとしていることが読み取れます。
  この作家が生きてきた時代背景から、なぜ作家がそれを描かなければならなかったのかを推測することは難しくありません。様々な公害問題、ベトナム戦争が残した傷跡など、これまで人間が遭遇してこなかったような様々な不安が私たちの暮らしを脅かしたのです。その不安は現在も消えたわけではありません。
文明が放つ光と影: 
  1960〜1970年代は世界的に多くの不安を抱えた時代でした。科学の進歩は様々な分野で多くの成果を挙げ、私たちの暮らしはまさに文明の利器に支えられ、物質的には非常に豊かになってゆきました。しかし成果だけが表面化された反面、後に問題となる様々な弊害を山積みにしていったのも事実です。
  第二次世界大戦が終結した後も世界中で戦争は繰り返されてきました。中でもベトナム戦争中、アメリカ軍によって使用された大量の枯葉剤は、汚染による奇形児を誕生させるなど、人類にとって忘れてはならない悲劇を招きました。また米ソの冷戦下、核兵器の開発とその実験による被曝の被害も出ています。
  化学の進歩、文明の発達は私たちに様々な恩恵を与え

てくれます。しかし歴史が証明してきたように、その使い方を間違ってしまえば多くの問題を併発する危険性も持っているのです。現在世界的に問題となっている「覚せい剤」ももともとは戦場における戦士の精神的苦痛を和らげる目的で開発されたものだったのです。医療の現場では病による苦痛を取り除くために使用される薬でもあり、薬その物をこの世から一掃するわけにはいきません。やはり使い方の問題なのです。
  人間の介入が許されない領域とも思われるそのような行為が、何らかの間違いによって誤作動してしまう可能性を「0%である」と言いきることなど誰にもできません。私たちは注意深くこの問題を見つめてゆかなければならないのかもしれません。